最高裁判所第一小法廷 昭和27年(オ)1263号 判決 1954年3月11日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
論旨は、第二点において違憲をいうが、第一点を前提とするものであり、従つて、論旨は、結局手形法七七条によつて準用される同法二〇条一項但書に対する原判決の解釈、適用を非難するに帰するものである。そして、同但書に、「指名債権ノ譲渡ノ効力ノミヲ有ス」とあるのは、「支払拒絶証書作成後ノ裏書又ハ支払拒絶証書作成期間経過後ノ裏書」だけに限り、その以前の裏書に及ばないものであつて、その以前の裏書は、いわゆる満期前の裏書で、手形より生ずる一切の権利を移転し且つ手形債務者は、所持人に害意のある場合の外その前者に対する人的関係に基く抗弁を以て所持人に対抗することができないものであることは、同条項本文、一四条、一七条等の規定により明白である。従つて、本件支払拒絶証書作成以前の受取人の裏書をも指名債権の譲渡の効力のみを有することを前提とし該受取人に対する人的抗弁事由を主張する所論は、爾余の点に論及するまでもなく失当たるを免れないこと多言を要しない。されば、原判決は、結局正当であつて、所論は、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)